「うーん、もうちょっと字がきれいに書けるかもしれない」

 仕上がりに少々不満をこぼし、ルイが新しい便箋を引っ張り出して書き写し始めた。

 ティーゼは、向かいから彼の手紙を覗きこんだ。便箋には、丁寧で読みやすい字が並んでいた。

「ルイさん? あの、完璧なラブレターだと思うのですが……」
「中央のココとか、僅かにずれているだろう?」

 たった一つのラブレターに、そこまで求めるのか。

 ルイの意気込みには絶句しかけたが、真剣な顔で手紙を模写する様子を見ると、「マーガリー嬢はそこまではチェックしないと思う」とは言ってやれず、ティーゼは頬杖をつき、ルイの作業を見守るしかなかった。


 太陽はすっかり傾いてしまっており、結局、町の観光すら出来ていなかった現実を、ティーゼはぼんやりと考えた。


 この町に物珍しいものはないにしても、唯一にある食堂で夕飯は食べたい。そして、シャワー付きの宿でぐっすり眠りたい。