ルチアーノが「やれやれ」と眉を潜め、手に持っていた詩集本を閉じた。

「あなたは免疫がなさ過ぎますね。もう少し勉強なさった方がよろしいのでは?」
「愛を囁かれることに慣れろと? その言葉の裏で考えている腹黒さを、先程ルチアーノさんに聞かされたせいで、ロマンチックの真意が余計に分からなくなったばかりなんですが」

 これでも私だって、乙女としてそういう事に理想は少なからず持っているんです、とティーゼは心の中で呟いて、深々と溜息を吐いた。

              ※※※

 ティーゼが机に突っ伏し、ルチアーノが愛には関係のない本を引っ張り出して読み始め、しばらくが経った頃、何百枚もの便箋を駄目にしたルイが、唐突にこう呟いた。

「出来た」

 待っていたその言葉を聞いて、ティーゼは、ガバリと顔を起した。

 目を向けた先には、自分一人で完成させた手紙を、念入りにチェックしているルイの姿があった。先にルチアーノが「手紙は文章が多ければいいものではありません」と説明してくれた甲斐もあって、手紙は二枚の便箋に収められている。