ティーゼの髪が想像通りの柔かさであると満足した後、ルイは、マーガリー嬢への想いがどれほどのものなのか語り始めた。それは口を挟むタイミングが見付けられない饒舌さで続き、ティーゼは、堪らずルチアーノへ助けを求めた。


 それから数十分ほどの時間が過ぎるまで、ルチアーノは、当然のようにティーゼの視線を無視した。


「陛下。想いを手紙にしたためてみるという手もあります」

 ルイが同じ話題を繰り返し語り始めた頃、ルチアーノがそう提案した。

 口で言えないのなら、紙に文字を起こすのは名案だと思えた。ティーゼは問題解決を察し、相談役は撤退の頃合いだろうと考えて、「じゃあ、私はそろそろ帰りますね」と言い掛けたのだが、ルイが台詞をかぶせるようにこう告げた。


「それは良いね。女性の意見も聞けるし、早速書いてみようか。ね、ティーゼ」


 魔界一と謳われる魔王ルイの、麗しい美貌に微笑まれて、ティーゼは断るタイミングを完全に失ってしまった。