「ティーゼ、怪我したの?」
「いやいやいやッ、昔の話しですよ。今は寒くなっても痛みませんし、痕だって目立たないんです」

 ティーゼは慌ててそう答えたが、優しい魔王が、ますます心配そうに目を細めた。

「人間の女性で髪が短いのも珍しいよね。男の子みたいな恰好をしているのも、怪我と関係があったりするの?」
「しないですッ、全然ないです! 私は昔からこんな感じでした!」
「綺麗な髪なのに勿体ないよ。まるで精霊が舞っているみたいに柔らかそうで、つい触ってみたくなるよ。ねぇ、ルチアーノ?」
「陛下、その無自覚な色気をマーガリー嬢に向けて下さい」

 ルチアーノがまともな指摘したが、ルイは、実際にティーゼの髪を触って感触を確かめ始めてしまい、聞いていなかった。