両親が他界してから、ティーゼは引き継いだ小さな菓子店でハーブのビスケットを売り、ギルドの仕事をこなして生計を立てていた。両親は精霊の血を引いていたが、ティーゼは神秘的な美しさも雰囲気も受け継がず、一目では混血児だと分からないほどだ。

 ティーゼの両親は、生涯に一度だけ未来を視る【予言の精霊】の血を引いていた。

 他種族の血が混じった人間も多くある平和な時代ではあったが、ティーゼの両親は、生粋の精霊を思わせる美しい容姿を持った先祖返りだった。

 彼らは、ティーゼが生まれてすぐ、国に関わる未来を視た。

『半魔族という新しい種族が闇より現れ、国王と魔王の結んだ平和を裂こうとする。しかし、一人の英雄が平和を取り戻してくれるだろう』

 未来視や予言の力を持った特定の希少種族は、その内容が国に関わる場合は、速やかに報告する事が決められていた。ティーゼの両親は、その未来視の内容を神官に報告した。


 それは見事に的中し、その予言を知らない人々も、今は国を上げてお祭り状態だった。