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「ルイさんはすごく美形で、良い声をしていて、笑顔も気配りも素晴らしい男性だと思います」

 再び魔王の別荘のテラス席で、テーブルの上のクッキーを全種類口に放り込んだ後、ティーゼは紅茶を飲んで一息吐いてから、そう切り出した。


 初対面の時、ルイの声を聞いた時の衝撃は忘れられそうにもない。ティーゼは、耳に直接くる色気というのを初めて知った事を思い出しながら、そう力説した。

 ティーゼの唐突な切り出しにも、ルイは素直に「ありがとう」と言って微笑んだ。しかし、ルチアーノが訝しむように赤い目を細めていた。


「陛下を口説いてどうするんですか」
「別に口説いてません、事実を口にしたまでです」


 冷やかな魔界の宰相の指摘に対し、ティーゼは自信たっぷりに反論した。

「ですが、完璧すぎてマーガリー嬢に警戒されている気がしました。ちなみに、好きだと伝わるようなアプローチは、ドレスを贈る他に何をされているんですか? 口説き文句とか、あったりします?」