「そのために私達は言葉を使うのよ。まぁ、それを平気で悪用する信用ならないクズもいるから、気持ちが伴っているのかは、きちんと見極めた方がいいでしょうね」

 マーガリー嬢はキレイな笑顔で「クズ」の部分を強調して言うと、「またね」とティーゼに別れを告げて踵を返した。ティーゼの隣にいたルイが、「また今度」と良い笑顔で見送ったが、彼女は振り返る事なく建物の中へと入って行ってしまった。

 うわぁ、これは露骨に交友を否定されているな……

 マーガリー嬢は大人の、特に異性に対しては警戒心がすごく強いのかもしれない。そうすると、もしかしたらルイの完璧な美貌と微笑みが、胡散臭く見えている可能性もある。


 つまり、現時点でルイの想いは全く伝わっていないどころか、敵認定されている可能性も浮上してきた。


「……ルチアーノさん、ちなみにルイさんのモテ具合はどんな感じなんですか?」
「魔界の城の廊下を歩いていると、その美貌を直視するか、お声を聞くだけで崩れ落ちる女性が大勢いらっしゃいます」

 と言う事は、ルイが幼馴染の彼よりもモテて、実質的にも優良物件である事には違いないのだろう。アピール方法を変えれば、低い確率とはいえ上手く行きそうな気もする。

 ティーゼだったら、こんな優しい人に想いを寄せられたら、きっと嬉しく思う。


 経験がないから、想像でしかないけれど。
 

 ルイの「戻ろうか」を合図に、ティーゼは、ルチアーノと共に来た道を戻る事にした。