「その、お姉さんはすごく綺麗ですね。理想の彼氏像とかありますか?」
「あら、正直な子なのね。私が気になるの?」

 マーガリー嬢が、どこか面白そうに告げて歩み寄り、近くからティーゼの顔を覗きこんで来た。

 汗をかいているはずなのに、近くまでやって来た彼女からは甘い香りがして、ティーゼは、自分の性別を忘れてくらくらした。

「えっと、そのぉ……」

 思わず、取り繕う言葉も頭から吹き飛んでしまった。横顔に、ルチアーノの心底呆れたような冷やかな眼差しが突き刺さったが、今まで自分の周りには男友達しかいなかったのでしょうがないだろう、とティーゼは心の中で訴えた。

 マーガリー嬢は、恥ずかしがるティーゼに気分を害した様子もなく、クスリと笑った。

「私には、あなたと同じぐらいの弟がいるのよ。姉上の理想になる、と可愛い事を言ってくれる子なの。あら、あなた剣を持っているのね。騎士でも目指すの?」
「いやいやいや、わた――げほげほッ、僕は冒険者になるために、ギルドで修業中の身なんです。僕には家族がいないから、世界中を飛び回って色々なものを見てみたいなぁと思いましてッ」