すると、やりとりを見守っていたルイが、ティーゼの性別について訂正するよう口を開きかけた。ティーゼは、チラリと彼に目配せして「任せて下さい」と視線で伝え、黙っているようお願いして、マーガリー嬢にこう言った。 

「ええと、この町には初めて来たんですけど、ルイさんは優しく案内してくれたり、美味しいクッキーをくれたり、それから相談にも乗ってくれて、兄みたいに良い人なんですよ」
「そう。確かに、根は悪くない男よね」

 それは何気ない返答だったが、ティーゼは「おや?」と首を捻った。どうやら、マーガリー嬢はルイそのもの全てを嫌っているわけでもなさそうだ。

 思わずルイを盗み見ると、彼は露骨に嬉しそうな顔をしていた。この調子でもっと聞き出してみて、と期待の眼差しを返されたので、ティーゼは相談された側として仕方なく、もう少し踏みこむため彼女に向き直った。

 演技力には自信がないが、マーガリー嬢が自分を無害な男の子としてみているのなら、いけそうな気もする。