甲冑の集団は、町の巡回を一通り終えると、ルイが「マーガリー嬢だよ」と指摘する甲冑を筆頭に、灰色のコンクリート造りの建物へと入っていった。


 騎士団の支部には、敷地を囲うように高い塀はあったが、前門は解放されていた。敷地に入ってすぐの広場で、騎士達が早速、甲冑の頭部分を脱ぎ始めた。

 ルイに再度教えてもらい、例の甲冑の人物を見つめていたティーゼは、次の瞬間「あ」と声を上げていた。甲冑で隠れていた頭部分から現れたのは、真っ赤に波打つ美しい髪だったのだ。

 その甲冑の人物は、切れ長の鋭い目付きさえも美しいと思わせる女性だった。顔立ちはどこか中性的で、整った目鼻立ちに加えて、毅然とした鮮やかなエメラルドの瞳も目を引いた。

「マーガリー嬢は、ベンガル伯爵の長女で婚約者はいらっしゃいません。国境騎士団の副官を務めており、剣の他に、槍使いとしてもトップクラスの戦闘技術の持ち主です」

 ルチアーノが、小さな声でそう説明した。

 マーガリー嬢が、汗で湿った髪を背中へと払った。表情に愛想がなくとも、きゅっと結ばれた唇にすら気品を覚えるのは、彼女が貴族としての立ち居振る舞いを身に付けているせいなのだろうか。