つまり、魔王はストーカーするほどに、騎士団に所属している美女に惚れているのだろう。

 ティーゼは頭を抱えた。関わらない方が良かったかもしれないと、今更ながら後悔が込み上げてくる。しかし、ここは高級菓子を頂いた件もあるので、相談を受けた者として、それらしい質問をルイにしてみる事にした。

「……ちなみに、どこに惚れたのか訊いてもいいですか?」
「出会いかい? それはね、僕がなんとなく空を飛んでいる時に、害獣を素手で倒す彼女の姿を見て――」
「待って、ちょっと待ってお願いですから。どこから突っ込んでいいのか分からなくなりました。空を飛べるの? というか、素手で害獣をぶっ飛ばす女の人が存在するの?」

 そういえば、彼らは生粋の魔族だった、とティーゼは遅れて思い出した。

 魔族は人型も多いが、魔力を解放した本来の姿は異形だと聞く。高位魔族は種族の特徴がある翼を持っているとも言われており、とすれば、空を飛ぶ事も可能なのだろう。