周囲から「英雄の再来だ」と呼ばれ、凛々しく美しい青年となった彼は、見事に王と人民の期待に応えて半魔の王を打倒し、正式な英雄として確固たる肩書きと、後世に残る名誉を得た。


 私は、心から彼の成功を祝福した。

 負わなくてもいい憂いなんか忘れて、ようやく彼は心から幸福になれるのだと安堵した。

 英雄の誕生は、私に世界を輝かせて見せてくれた。
 誇らしげに微笑む彼の顔を遠目から見て、幼い頃のトラウマをようやく乗り越えたような姿が眩しかった。

 自然な別れを求めていた私にとって、それは絶妙なタイミングだった。

 もし、また彼と顔を会わせる機会があるのなら、ずっと後回しにしてしまっていた別れの言葉を、今度こそ口に出来るような気がする。

 その時こそ、私が彼から奪ってしまった彼の貴重な青春の時間を詫び、古い過去に別れを告げよう。事件なんてなかった日の友人同士として、それぞれが身分相応な世界で幸せに生きて行こうじゃないか。


 他の仲間達が、大人になって外の世界に飛び出していったように、私も動き出そうと思う。


 考えると楽しみでならず、私は、これからの新しい未来が輝いて見えた。