「ほら、あれが愛しのマーガリー嬢だよ」


 ルイは、まるで恋する乙女のような顔で、うっとりとその名を呟いた。

 彼と同じ方向を見たティーゼは、正直、強い困惑を隠せなかった。どう反応すれば良いのか分からず、とりあえず、失礼にならない程度に言葉を濁して尋ねてみた。

「……あの、ルイさん? あれらのどこにマーガリー嬢がいらっしゃるのか、透視能力のない凡人の私には分かりかねるのですが」
「あはは、何言ってるの。僕にもそんな羨ましい能力はないよ」

 いやいやいや、あんたが何言ってんの。歩いている集団、全員ほぼ同じ背丈で、同じ甲冑で揃えているから区別が出来ません。

 通りからこちらに向かって歩いて来るのは、銀の甲冑に身を包んだ騎士達だった。腰には紋章入りの同じ剣を差し、足並みから呼吸まで揃えているようにも見える。

 ティーゼは、もしかして魔王はすごく残念な人なのかも、と思い始めた。

「えっと、ルチアーノさん? あなたにはルイさんの想い人が、どの甲冑か分かりますか?」
「残念ながら分かりかねます」