「真面目な顔して何言っちゃっての!? 私だって女だし、女心も分かっているつもりですよ! 女の子は誰でも豊満な胸が欲しいし、くびれにも憧れるし、あと身長がもう少し高ければいいのに!」
「後半は単に、あなたの願望ではないのですか」

 ルチアーノに冷ややかな止めを刺され、ティーゼは、両手で顔を覆って項垂れた。

 この目付きの険しい嫌味野郎、もう嫌だ。

 そう口の中で愚痴っていると、ふと、目の前に魔王が立つ気配がして、ティーゼは顔を上げた。すぐそこには、何故か美貌に花を咲かせた魔王の、期待に瞳を輝かせた素晴らしいお顔があった。

 魔族という特性のせいか、彼らは、どちらもすごく背が高い。それでも正面から真っすぐ絡み合う視線に、ティーゼは少し遅れて、魔王が腰を屈めてこちらを覗き込んでいる事に気付いた。

「……何でしょうか?」

 一歩後退しながら、ティーゼは、少し前の自分の発言に何かまずいところでもあっただろうか、と悩んだ。