「そうですか。魔族は女性の匂いと、年頃の色香には敏感な生き物だと自負していたのですが……」
「露骨な表情吐くってまで打ちのめすの、止めてくれません!? これでも下着選びには苦労してるんですよッ、女は面倒な生き物なんです!」

 ティーゼは堪らず、「畜生!」と地団太を踏んでいた。彼女は、別にサラシを巻いてもいなければ、胸が潰れるようなジャケットを選んで着用している訳でもない。どのジャケットを着ても、女性らしい体付きが隠れてしまうだけなのである。

 やりとりを見ていた魔王が、遠慮がちに二人の間に割って入った。

「あのね、一応年頃の女の子が、そういう話題を口にするのは良くないと思うよ?」
「いいんです、大きくなければ動く時に邪魔になったりしませんし、育つのは、きっとこれからだと思っていますから」
「だから、そういう――」
「陛下、コレは改善の余地のない可哀そうな人間です。コレが年頃の娘だというのは何かの陰謀に違いありません」