「待っていたよ、ティーゼ」

 そこに現れたのは、クリストファーだった。見事な装飾が施された正装服に身を包んだ彼は、英雄というよりは、まるで物語の王子様のよう美しさがあって、ティーゼはドキリとしてしまった。

 戸惑う間にも、彼が美麗な顔で優しく微笑んだ。その胸元には、大きなエメラルド色のブローチが輝いていた。

「ティーゼ、とても綺麗だ」
「えっと、その、ありがとう……? クリスも、何だかいつもと違うね」

 動揺もあって、ティーゼは、彼の事を自然と愛称のまま呼んだ。

「ふふふ、ありがとう。首周りが寂しいかなと思って、ネックレスを用意してあるんだ」
「えぇッ、いや、わざわざそんな――」

 いつの間にかメイドの姿はいなくなっており、彼女に助けを求めようとしたティーゼは慌てた。

 ひとまず、ティーゼは「高い物は受け取れないからッ」と幼馴染に答えたのだが、その間にもクリストファーがポケットからネックレスを取り出して、「身構えなくて大丈夫だよ」と言いながら見せて来た。