「噂通りの子ねぇ。大量にではなく、適度に頂きなさいな」
「ケーキもあるから、きっと気に入ると思います」
時刻は既に、正午を回っていた。会場に案内するからと年長のメイドが告げたので、ティーゼは「やっぱり参加しなくちゃいけないのか」と思いつつも立ち上がった。
※※※
ティーゼは、少し踵のある靴が慣れなくて、ゆっくりとしか歩けない事にもどかしさを覚えた。
「立っていたら足元も見えないし、これ、普通の靴に変えちゃダメですか?」
「駄目です」
「それと、ドレスがすごく重――」
「駄目です」
「まだ何も言ってないのに!?」
ティーゼとメイドの二人が歩く長い廊下には、不思議と他に人の気配がなかった。王宮とは、こんなにも静かな場所なのだろうかと、ティーゼは首を捻った。
「あの、すごく静かですね。本当にパーティーとかやってるんですか?」
「入場までのルート上から、退避命令が出されておりますから」
「は?」
ティーゼの視線を横顔で受け止めたメイドは、済ました顔で「何でもございませんわ」としれっと口にした。護衛や見張りの衛兵も、彼女達から見えない位置に隠されているのだという事を知らないのは、ティーゼだけだ。
「ケーキもあるから、きっと気に入ると思います」
時刻は既に、正午を回っていた。会場に案内するからと年長のメイドが告げたので、ティーゼは「やっぱり参加しなくちゃいけないのか」と思いつつも立ち上がった。
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ティーゼは、少し踵のある靴が慣れなくて、ゆっくりとしか歩けない事にもどかしさを覚えた。
「立っていたら足元も見えないし、これ、普通の靴に変えちゃダメですか?」
「駄目です」
「それと、ドレスがすごく重――」
「駄目です」
「まだ何も言ってないのに!?」
ティーゼとメイドの二人が歩く長い廊下には、不思議と他に人の気配がなかった。王宮とは、こんなにも静かな場所なのだろうかと、ティーゼは首を捻った。
「あの、すごく静かですね。本当にパーティーとかやってるんですか?」
「入場までのルート上から、退避命令が出されておりますから」
「は?」
ティーゼの視線を横顔で受け止めたメイドは、済ました顔で「何でもございませんわ」としれっと口にした。護衛や見張りの衛兵も、彼女達から見えない位置に隠されているのだという事を知らないのは、ティーゼだけだ。