「うふふ、落ち着きがないところも、実に可愛らしい方ですわねぇ」

 後ろに控えていた若いメイドの一人が、鏡の中から、ティーゼに困ったような笑顔を向けて来た。

「ほんと、可愛らしい精霊さんみたいにキレイですわよ」
「はあ。あの、ありがとうございます……?」
「傷跡が目立たないように化粧を施してありますから、あまり強く擦らないようお願い致しますわ」

 メイドの中で、年長者らしい落ち着いた女性がそう指摘した。

 ティーゼは、自分の姿を今一度見降ろした。スカートなんて恥ずかしいと常々思っていたが、まるで少年には見えない今の自分を見ていると、人生で一度は着てみたいと思っていた可愛いドレスは嬉しくもある。

 しかし、想像以上にドレスというのは窮屈に作られているらしい。ティーゼは、締めつけられた腹部を見つめ、悩ましげに首を捻った。

「……あの、これだけ締め付けられていると、ご飯が大量に入らないと思うんですけど」
「舞踏会なのにご飯ですってッ?」