「いやはや、女性の身支度ほど時間がかかるものはありませんよ。信頼のおけるメンバーが揃えられているとは思いますが、彼女達はプロですからね。それなりに覚悟はしていた方がいいとは思います」
「は。覚悟?」

 待って、なんでドレスを着るだけなのに覚悟が必要なの?

 ティーゼは思わず、肩越しにクラバートを振り返ったが、彼は意味深に乾いた笑みを浮かべたかと思うと、明確な言葉もないまま、ぎこちなく視線をそらされてしまった。

 しかし、王宮でティーゼは、それを身をもって知る事となった。

              ※※※

 飛竜が降り立ったのは、静けさが漂う王宮のど真ん中だった。

 見事な城の造りにティーゼが呆気にとられている暇もなく、回廊から数人のメイドが足早にやって来て、ティーゼはクラバートから引き離された。

 まずティーゼが連れられて来たのは、恐ろしいぐらいに広い風呂場だった。

 メイド達は、ティーゼの胸にある大きな傷跡に驚く様子も見せず、同性だろうと他人に裸を見られる事を拒否したティーゼの意見を無視し、手早く服を剥ぎ取り、磨きに磨いた。メイド達の行動は有無を言わせず強行的で、ティーゼの予想に反して腕力も強かった。