振り払うわけにはいかないし、かと言って、触わるのも憚られる――どちらにせよ、こちらのやりとりを冷ややかな目で見守っているルチアーノに、嫌味を言われるのは容易に想像出来た。

 しかし、ティーゼの素直な口は、そんな小さなパニックでも本音を抑える事が出来なかった。

「いやいやいや、二百歳って、私達からすると、とてつもなく年上なんですが」
「そう? 僕たちの中では全然若いよ。多分、人間でいうところの二十六、七歳ぐらいかなぁ。だから、気軽に話してくれて問題ないよ」
「アバウトすぎますよ色々と!」

 ティーゼが力いっぱい断ると、魔王は少し困ったような表情をした。考える素振りをした際、肩に置かれていた彼の手が離れた事に、彼女はほっとした。

「うーん、やっぱり人間と魔族の感覚の違いのせいかな。それとも、若い女の子に、いきなり友人関係を築こうとするのは難しいのかな?」
「友人にするつもりだったんですか、初対面の、今のこの場で?! 意味が分かりませんし、ここは通りすがりの郵便配達人だと思って華麗にスルーして下さって結構です!」

 そこで、ティーゼはようやく「あれ?」と首を傾げた。