なぜ平民が、プロが勢揃いしている王宮の一室でドレスアップされる事になっているのか。

 幼馴染だけが理由ではないとすると、ルイがうっかり口を滑らせて、ティーゼが魔王の友人である事が知られでもしたのだろうか。もしくは、家に連絡を取ったマーガリー嬢が、「参加させたい子がいるのだけれど」と意見したのだろうか。

 ハッキリとしないクラバートの説明に、ティーゼは多すぎる可能性に頭を悩ませた。


 飛竜が到着次第に出発する、と続けて説明したクラバートに連れられて、ティーゼは、悶々とした気持ちを抱えたままルイの別荘に向かった。


 途中、空に銀色の輝きが飛び去っていくのが見えて、「ん?」と顔を上げた。それに気付いたクラバートが、ティーゼと同じ方向へ目を向けて「ああ」と笑って肯いた。

「あれが飛竜ですよ。小隊が、我々の飛竜を送り届けたのでしょう」
「遠目からは見た事があるけど、飛竜かぁ」

 まさか、そんなものに乗る日が来ようとは思ってもいなかった。庶民が乗る機会など絶対にないし、イベントの際に飛行風景が公開されるぐらいだ。飛竜は大人しい生き物とは聞くが、あれで高いところを飛ぶのは、怖い気もする。