その時、投影された映像の向こうから、ベルドレイクを呼ぶ声が上がった。彼が疲労しきった顔をそちらへと向け、小さな声で言葉を交わした後、こぼれおちんばかりに目を見開いて「は?」というような口の形を作った。

 それから数秒も待たず、ベルドレイクがギョッとしたように飛び上がり、それから勢い良くクラバートを振り返った。そして、堪らず立ち上がり、少しの間映像の中から消えた。

 しばらく経った後、長椅子に戻って来たベルドレイクが、言葉を詰まらせたように口の開閉を繰り返し、それから諦めたように頭を抱えた。

『…………おい、クラバート。魔王が、舞踏会でマーガリーに正式にプロポーズをするというのは本当か?』
「…………あ~、さきほど耳に入れました」
『…………英雄の提案で、急きょ明日の参加に決まった。英雄と魔王が、謁見の間に用意された魔法通信機で陛下達と直接話し合われたようだ』

 こちらを見るベルドレイクの目が、強い同情と憐れみを含んでいる事に気付き、クラバートは、先程覚えた嫌な予感が、現実化する気配に顔を引き攣らせた。