「それで、陛下は諦めてくれたんですよね?」
『諦めざるを得ない、という状況だったからな。クリストファーは、姫が自分に気があるのには薄々気付いていると口にし、それならばハッキリ断らせて頂きますので彼女を呼んで下さい、と親しみ深い穏やかな微笑で要求した』
「あの、絶対零度の笑顔しか想像出来ないんですが…………」

 姫は無事だよな? 怪我させてないよな?

 クラバートの続く質問を予想していたのか、ベルドレイクが「姫は無事だ」と言って、先の言葉を続けた。

『笑顔はブリザード級だよ、クラバート。姫は鈍感な方なので、気付かなかったようだが……見守っている間、胃に穴が開きそうだった。クリストファーが姫に対して、最後まで強硬手段に出なくて安心した』
「……まぁ、彼の場合は、相手が女性だろうが容赦しませんもんね」

 むしろ、幼馴染の少女以外の人間がどうなろうと、知った事ではないという態度がありありと見て取れる。クリストファーの行動理由は、全て幼馴染の少女に結び付けられており、それ以外の目的が何もないという危なさも秘めていた。