大変嫌な予感しかしないが。むしろ、このまま事態が進むと、いずれ遅くないうちに、とばっちりでこちらまで巻き込まれる予感がするのだが……

 しかし、ベルドレイクの心労を思えば聞く他ないだろう。

 クラバートは、逃げ出したい両足を机の下で押さえ込み、仕方なく話の詳細を促した。

「それで、どういった『平和的な交渉』を持ち掛けられたんです?」
『今すぐ国を破壊されるか、約束を守って国を破壊させないか、どちらが良いかと、彼は愛情深い微笑みで訊いて来た。その間、彼の体内から溢れる魔力だけで謁見の間が崩れかけ、止めに入ろうとした魔術師と近衛騎士が殺気にあてられて気絶し、立ち合わせた最高神官が心臓発作を起こし、残りの人間は呼吸困難に陥った』
「何ソレ怖い。もう魔王レベルじゃないですか」

 強すぎる魔力は、裏を返せば実害しかもたらさない。感情の揺れによって増幅される事もあるが、人間がそれほどの魔力を扱えるのは稀である。