テーブルに肘をつき、指を組んだ拳に口をあてて考え込んでいたベルドレイクが、その声にようやく顔を上げて、細いサファイアの瞳でクラバートを見つめ返した。

『……ああ、クラバートか。久しいな、元気にしているか』
「まだ三日しか経っていないですよ、総隊長」
『そうだったか。まだ三日だったか…………』

 え、そっちで何があったの。辺境勤務の騎士が羨むほどの、祝いと休日っぷりじゃなかったっけ?

 クラバートは、しかし口にはしなかった。きっとベルドレイクの顔に見える死相は目の錯覚であり、疲れ切った声に関しては、自分の耳が詰まっているせいだろうと思い直す事にした。でなければ、話の先を聞くのが怖すぎて通信を切ってしまいそうだ。

 ベルドレイクが、深い溜息をこぼして先を続けた。

『陛下がな、私に無茶な事を言ってくるんだ。姫も気に入っているから、英雄であるクリストファーと結婚させたいらしい……どうにか城に引きとめておけと言われて、そのおかげで視線だけで何度も殺され掛けた私の身にもなってみろ。最近、抜け毛もすごいんだ』