「ティーゼの質問は素晴らしかったよ。まさか舞踏会まで受け入れさせてしまうなんて、さすがだよ。これで、僕も公式的にプロポーズが出来る」
「……?」

 ティーゼは、訝しげに首を傾げた。

 ……貴族は、プロボーズにまで何かしらのルールがあるんですかね?

 そんなティーゼの知識不足に気付いたルチアーノが、貴族は婚約した後に結婚という流れになっており、位が高い者ほど、国王陛下などの証人があった方が早く事を運べるのだと説明した。

「あ~、なるほど? でも、すぐに返事をもらえなかったりしたら、どうするんですか?」
「それもあまり問題になりません。周囲に『彼女は既に彼の意中の人物である』と知らしめられますから」
「知られるのは分かるけど、どっちにも恥ずかしいでしょう?」
「恥ずかしい? ――ふぅ、やはりあなたは、お子様で、相当なお馬鹿のようですね」

 何故か、見下された上に冷ややかな笑いを送られた。

 ティーゼは理不尽過ぎると思ったが、反論すると十倍以上の嫌味が返ってくる事は目に見えていたので、悔しいが口を閉じている事にした。