見事なフォームで走るマーガリー嬢の姿は、あっという間に見えなくなって行ってしまった。

 
 ティーゼは、唖然とその後ろ姿を見送った。

「……あの、ルイさん? マーガリーさんが逃げて行っちゃったんですけど」
「だから言っただろう? 照れているんだよ」
「…………」
 
 恋で目が曇った魔王の言葉とは言え、先程のマーガリー嬢の表情を思い返すと否定も出来なかった。つまり、初めてのプロポーズにマーガリー嬢がマジで照れているのだと、恋愛方面に全く免疫がなかったらしい事実に、ティーゼは衝撃を覚えた。

 そうか、本当に彼女は、中身が物凄く可愛い人なんだな……

 行動力は斜め上にずれているし、猪突猛進というか、男に負けず勇ましい部分も多々持っているようだが、と考えたところで、ティーゼは新たな疑問を覚えてルイを振り返った。

 ニコニコとこちらを見降ろす彼が、マーガリー嬢との内緒話について追及して来ない様子に、ティーゼは「もしや」と勘ぐってしまった。