マーガリー嬢は、ティーゼの本気の嫌がりようを見て「あら、違うの」と片眉を上げ、残念そうに「そうなの……」と呟いた。しかし、彼女もまた立ち直りが早いのか、にっこりと笑ってティーゼの手を取った。

「私、これから魔王陛下に直接、招待を受ける事を伝えてやろうと思うの。だけど、彼を前にすると苛々するから、あなたも付いていてちょうだい」
「えッ、なんで私なんですか」

 マーガリー嬢は、ティーゼの華奢な手を強く掴み直と、実に妖艶な笑みを浮かべた。


「なんだか、あなたといると不思議と落ち着くのよ。まるで、小さな精霊がそこにいるみたいに心穏やかになるの」


 つまり、厄介事に巻き込まれ、振り回されるのはこの身に流れている血のせいとでもいうのだろうか……?

 ティーゼは、思わず乾いた笑みを浮かべた。

               ◆

 ティーゼは、ルイの手紙での誘いを受ける事にしたマーガリー嬢に連れられ、再び魔王の別荘に戻って来た。


 結果をいうと、マーガリー嬢は、まるで喧嘩を挑むようにルイに舞踏会の件を伝えた。蔑むように顎を上げて、冷やかに美しい目を細め、「お父様にもお会いしていないから、ついでに誘われてあげるわ」と辛辣に告げた。