「あなた、女の子なのね」

 唐突に切り出され、ティーゼは目を丸くした。

 マーガリー嬢は怒るわけでもなく、もどかしいように長い髪の先に指を絡めた。

「笑った顔を見て気付いたの。小奇麗な男の子だと思っていたけれど、私の弟とは全然違うわ」
「えぇと、すみません。その場のノリで否定するタイミングを誤ってしまったというか、勘違いされる事も多々あるので……」
「十四歳ぐらいかしら?」
「十六歳です」

 素早くティーゼが年齢を訂正すると、マーガリー嬢は「もしかしてだけど」と思案するように視線を彷徨わせた。

「あなたの姓は『エルマ』?」
「ん? そうですけど」

 何故知っているのだろう。

 ティーゼの問う視線に、マーガリー嬢が可笑しそうに微笑した。

「やっぱり、あなたが『町の花娘』なのね。もしかしたらと思っていたけれど、そう、あなたが『ティーゼ・エルマ』なの」
「なんですかそれ? 私は『花娘』なんて呼ばれていない、ただの凡人ですよ」