……これは、魔王の片想いで終わるのかもしれない。

 心配になってルイに同情の眼差しを向けようとした時、マーガリー嬢の強烈な視線がティーゼの横顔を射貫いた。まるで叱られるような緊張感が走り、ティーゼは「ふぉ!?」と声を上げて、条件反射のように彼女を振り返った。

「あなた、魔王陛下の友人なのでしょう?」
「へ。あ、そうですね……」

 ティーゼの嫌な予感が的中するように、マーガリー嬢が、その美貌に合う凛々しく高圧的な笑みを浮かべた。


「ちょっとそこまで付き合いなさい」


 言い切る言葉は命令的で、どこにも拒否権は探せなかった。同情の欠片さえ見えないルチアーノの眼差しと、「話を聞き出してきて」というルイの期待の視線を受け止めて、ティーゼは諦めたように項垂れた。

 ティーゼは、またしても退出のタイミングを逃したのだと悟りながら、泣く泣く「喜んで」と、マーガリー嬢に答えたのだった。

            ◆

 美人は目の保養である。それは平民が誰しも抱えている憧れであり、美女や可愛い女の子と話すのが、とれほど楽しい事か、幼い頃から男友達ばかりだったティーゼも自身の暮らしの中で実感していた。