「宿で一泊して、それから列車に乗って戻るから平気です。今日すぐに帰るんじゃなくて、自由にこの町を観光して好きに過ごすって意味ですッ」

 しかし、そう語るティーゼを振り切るように、ルチアーノは長い足を進め続け、あっという間に屋敷の正門へと辿り着いてしまった。


 別荘の正門の外側で仁王立ちしていたのは、白いシャツに黒いパンツ姿をしたマーガリー嬢だった。こぼれそうなほどの豊満な胸と、細い腰の形がわかるパンツに、ティーゼは強烈な色気をおぼえてよろめいた。想像以上に素晴らしい体系だと思った。


 よろめいた彼女を、後ろにいたルイがそれとなく受け止めた。ルチアーノが説教をするような眼差しをティーゼに向け、それから、顔を元の無表情に戻して門を開けた。

「どのような御用でしょうか」
「そこの小さい彼に用があるのだけれど」
「え、私ですか?」

 ティーゼは、思わず素っ頓狂な声を上げた。ルイが少し残念そうに「僕に会いにきてくれたのじゃないの」と小首を傾げると、途端にマーガリー嬢が顰め面をして、「ふんっ」と顔をそらした。