「……ルチアーノさんのせいで、今すぐ直接言える自信がなくなっちゃったから、『美味しいお菓子をありがとう』って伝えておいて下さいませんか」
「おや。客人が使用人に礼を?」
「すごく良くしてもらっているんですもん。お風呂もベッドもそうだし、食事もお菓子も、全部が全部、すごく美味しかったから」

 ルイが手紙を渡し終えた今、ティーゼがいる必要はもうないので別れ時だろう。なんだかんだで二人に付き合えたのも、屋敷の使用人が用意してくれた紅茶やお菓子が、特別美味しかったせいだろうとも思うので、礼を伝えたいのだ。

 すると、ルイが微笑み「彼らは耳が良いから、きっと今頃喜んでいると思うよ」と言った。ティーゼもつられて「えへへ」と笑い返し、目的を達成出来た彼に改めて言葉を告げた。

「ルイさん、手紙を渡せて良かったですね」
「そうだね。返事を聞かせて欲しいとは書いたけれど、日時は指定しなかったからのんびり待つよ。その間も、しっかりアプローチするからね」

 ルイが、良い笑顔でそう言った。