ルイが、眉間の皺に嫌悪を滲ませたルチアーノを見て、どこか察したように苦笑を浮かべた。

「そっか。まぁ、あの様子じゃ仕方ないね」
「陛下、仕方ないで済まさないで下さい。コレのせいで、私への風当たりが酷いのは納得出来ません」
「本人を目の前にして、指を差し向けてコレって言わないでもらえません? ルチアーノさんの、私への扱いが酷い方が納得出来ません」

 ティーゼはしっかり主張したのだが、ルチアーノは露骨に無視した。彼が暖かい紅茶を口に運ぶのを見て、ティーゼは、いつの間にかテーブルに新しい紅茶と、美味しそうなハーブ・スコーンが並べてある事に気付いた。

 屋敷の主人が帰って来たのだと考えれば、テーブルの上の紅茶や菓子を、新しいものにするのは自然な流れだとも頷ける。しかし、勿論使用人の姿も見てはいないし、気配も微塵に感じなかった。

「……あの、いくらなんでも使用人さん、仕事が早すぎません?」
「人間である貴女に気を遣っているのですよ。彼らは人型ではありませんから、人間の前には出ないよう心掛けているのです」
「そんなに怖い姿をしているんですか?」

 ティーゼは、涼しげなルチアーノの横顔に向かって尋ねた。