嫌な予感を覚え、クラバートは呑気な面構えを顰めた。彼女は優秀な部下だが、頭が固すぎるのか、その行動力が斜め上へそれる事があるのだ。


 マーガリーは数秒ほど頼もしい顔で考え込んだ後、一つ頷いて手紙をポケットにしまった。その様子を見ていたクラバートは、彼女の中で、何かしら次の行動が決まったのだろうと察した。


「取り乱して申し訳ありませんでした、団長。シャワーで汗を流してから、少し外出します」
「あのさ、お前、今日はずっと非番だから別に申告の必要もないんだが……」
「失礼致します」

 話しも途中だというのに、マーガリーは早々に退出して行ってしまった。

 クラバートは、目先で閉まった扉を見つめたまま、行動の予測が掴めない部下を思い、不安な面持ちで「大丈夫かねぇ」と煙草を灰皿に押し潰した。

 とりあえず飯を食うのが先だ。悩むのも考えるのも、その後だと決めて、彼も重い腰を上げた。

             ◆

 クリストファーが去ってしばらくが経った頃、戻って来たルイが爽やかに微笑んで、ティーゼとルチアーノに『手紙を渡す作戦』の結果について報告した。

 手紙を渡したところ、返事もないまま猛ダッシュで去ったのだという。