「団長。この手紙に陰謀や、策略といった可能性は?」
「……あのな、どんな文章かは聞かせてもらったけど、それは好きな女を口説いているだけなんだって。俺だって結婚するまでは、必死に口説いて褒め殺して、時には土下座も――」
「つまり、あの魔王陛下は、私の事が好きだというの?」
「あんだけアプローチされて気付かなかったのかッ?」

 クラバートは、逆に驚いてしまった。完璧な彼女が、恋愛面に関して初心だとは意外な一面である。てっきり彼の想いを知ったうえで、魔王からの甘い言葉を一刀両断していたと思っていたからだ。

 マーガリーは混乱したまま、再び手紙を茫然と眺めて「だって」とうろたえた。

「私、一度も『好き』だなんて言われてもいないのに……」
「いやいやいや、言葉にしなくても分かるだろ」
「そんな素振りもなかったのに……」
「いつも露骨に愛想を振りまいてたろうが!」
「駄目だわ、頭が回らない」

 クラバートの話を聞いていないのか、マーガリーが、唐突に思い立ったように腰を上げた。