彼女の上司である団長のクラバートは、何度目かも分からない返答をして、何本目かも分からない煙草を吹かした。

 プライバシーの関係もあって、――魔王に殺されてしまう可能性も考え――手紙の文面は見ていないが、だいたいの内容を聞かされれば察せる事だった。クラバートは、魔王ルイが今度は、ラブレター作戦に出たのだろうと容易に推測していた。


 マーガリーは、日課である走り込みから戻って来てから、ずっとこの調子だ。


 普段なら戻り次第汗を流し、非番であろうが、緊急事態に備えて几帳面に騎士団の制服を着込んでいるというのに、今のマーガリーはトレーニング着のまま、執務室のソファに座り込んで動かないでいる。クラバートは休憩にも出れず、彼女の相手に付き合わされていた。

 うん、勘弁して欲しい。腹が減って、ピークに達しているんだが。

 クラバートは、もう一時間もこの押し問答が続いていることを思った。空腹過ぎて、ついでの書類処理をやる気も起こらない。