それ以上の褒め言葉が見つからず、ティーゼは視線を泳がせた。そういった話題については、あまり興味がなかったので、詩人や酒屋で耳にする程度だ。有名らしい姫の事だけでも、もっと知っていればクリストファーに話しを合わせられたのになぁ、と少し後悔した。


「城に残っている第二王女は、君と同じ十六歳。――まぁ、美人ではあるけど」


 それが? とクリストファーが畳みかけた。

「ティーゼが気になるというのなら、僕が会わせてあげてもいいんだけど、君はそういう事には興味を持っていなかったよね? 姫の名前だって知らないだろう?」
「ぐぅ、確かに知らないけどさ……」

 みんな「美人な姫」って呼んでるんだから、庶民はそれぐらいでいいじゃんか。

 ティーゼは、そう目で訴えた。けれど、クリストファーは追及の手を緩めてくれなかった。彼は、どこか威圧感さえ覚える完璧な笑顔のまま、言葉を続けた。

「君が自主的に手に入れた情報でないとすると、どこかの詩人に、良い話しでも聞かされた口かな。彼らは役得だからね。すぐに優しい眼差しを向けて、それが異性ならば、手を取って甘い言葉を紡いだりする」