よし、言うぞと意気込み、ティーゼは一呼吸整えてから彼に向き直った。

「心配かけてごめんね。でも、私はもう大丈夫だから、これからは心配なんてしなくてもいいよ」
「…………何が、と訊いてもいいかな?」

 クリストファーの周りの温度が、更に下がった。

 ティーゼは、予想の反応ではなかった事にたじろいだ。疑問を覚えつつも、「だから、傷の事でしょ?」と控えめに言って首を傾げた。


「傷跡も薄くなってるし、もう昔の事だよ。他のメンバーと同じように、私だって全然気にしてないし。だから、クリスが責任を感じて気に掛ける必要はないし、もう、昔の事は忘れてくれていいんだよ」


 もう手を引いてもらう必要がないほど、ティーゼも強くなった。泣き虫で女の子みたいだった彼が、国で三番目となる英雄の称号を得て、人々に称えられる最強の男となったように、ティーゼもまた大人になったのだ。

 ようやく伝えられたと言う安堵もあって、ティーゼは肩の荷が下りて、自然と笑顔になった。