ルチアーノの横顔の表情に変化はなく、礼儀がなっていないだとか、話しがまとまっていないと怒らせてはいないらしいと、とりあえずティーゼは安堵した。


「話しを聞く限りでは、どちらが悪いという事でもありませんね」


 少しの間を置いて、ルチアーノがこちらへと顔を戻しながら、期待していた内容ではなかったとどこか残念がるように言った。噂とは違う印象だったとでも言いたいような、露骨な落胆ぶりだった。

 この鬼畜は、一体どんな内容を想像していたのだろう?

「だから、幼馴染なんですってば。腐れ縁みたいな感じなんですよ」

 自分でも驚くほど不貞腐れた声が出たが、ティーゼは、構わず紅茶に手を伸ばした。話し疲れた喉は思った以上に乾いていたようで、紅茶は冷めていても美味しく、ついカップをぐいと傾けて飲み干してしまう。

「あいつだけ、つまらない事をずっと気にしているんです。それだけなんですよ」
「それだけ、ねぇ……。恐らくは、違うとは思いますが」