「まぁ、程々にしなさいよ。それから、あまり心配もかけないでちょうだい、世界の平和のためにも」
「あはは、大袈裟だなぁ。で、依頼の内容は?」

 ティーゼが促すと、マリーは深い溜息を吐きながら、一つの手紙を差し出した。

「あんたが関わると、大袈裟になりかねないのよ」

 マリーは口の中で不安を滲ませたが、ティーゼは全く心当たりがなかったので、黙って手紙を受け取った。

「行き先は国境沿いにある、ランベルの町よ。この手紙を、ルチアーノ・バルド・セクターまで渡して。一軒だけ白亜のバカでかい屋敷があるから、行けばすぐに分かるわ」
「バルドって事は、魔王直属の人なの?」

 人間族の王族貴族の名に、デクターがついているのと同じように、魔族の中でも生粋の魔王派で、高い地位を与えられている者にはバルドが付けられていた。現魔王は、二百年前に代替わりしたばかりで、とても温厚派だという事でも有名だ。