クリストファーは律儀な男なので、今頃、どこかを歩いて時間を潰しているのだろう。祝いの途中で探しに来るほど、心配するとは思ってもいなかったから、王都からこんなに離れた所まで来た彼には、悪い事をしたなと思う。


「あれは英雄というより、まるで人間族の魔王のようですね」


 ティーゼがサンドイッチを食べ終えた頃、ルチアーノが唐突にそう切り出した。

 先程の幼馴染の様子を思い出して納得してしまいそうになったが、ティーゼは、少し遅れて自分の知るクリストファーを思い浮かべ、「いや違うんですよ」と否定の言葉を口にした。

「普段のクリストファーは、優しくて温厚なんです。多分、昔の事でも思い出して不安定になっていたんだと思います」

 彼の心配性は、例の事件からずっと続いている。それを、ずるずると引き延ばしてしまったのは自分なのだとも分かっていたから、ティーゼは申し訳なさが込み上げて、飲みかけていた紅茶カップをテーブルの上に戻した。