コウキに恐る恐る「コウキが撮った写真を見たい」と言ったら、あっさり沢山のアルバムやら写真集を渡してくれた。
 恐らくコウキの初期の作品だろうと思わせる写真は、淡く、柔らかな風景を切り取ったものばかりだった。
 優しいコウキらしいな、と思った。
 それがある日を境に作風がガラッと変わっている。
 私が使わせてもらっている部屋に飾ってある写真のように、モノクロしか撮らなくなったようだ。
 コウキの話を聞き、トモキさんの話を聞き、マナさんの死がきっかけだと直ぐに分かってしまって何故か胸が苦しくなった。
 そのままコウキの作品に見入っていると、見覚えのある大通りを見つけた。
 その瞬間、体中の血液がドクンと脈打ち、脳に様々な情報が逆流してくるような感覚を覚えた。
「え?!何これ?こわい!」

“才能”。

“嫉妬”。

“重圧”。

“努力”。

“プレッシャー”。

 言葉が流れ込んで来る度に体が透けていく。何これ?こわいっ!


「嫌だ!消えたくない、死にたくない!コウキともっと一緒にいたい!コウキの側に居たい!」


 ……私の願いは虚しく消え去り、その日、私はコウキの部屋から消えた。