コップを片付けて、私も少し眠るか、と思った時、コウキの部屋から悲痛な呻き声が聞こえた。プライベートに関与しないとは言ったが緊急時は別だ。私はコウキの自室に押し入った。
そこには、魘されているのか、体をぎゅっと小さく丸めながらポロポロと涙を流し、「マナ……ごめん……ごめんな」とマリア像のペンダントを握り締めながら許しを乞うコウキの姿があった。
『起こさなきゃ』そう思った。コウキを助けなくては。
思いっきりコウキの体を揺さぶって、「コウキ!」と名前を呼んだ。
何度も。
やがて目を虚ろにさせながら、コウキが「マリア?」と意識を此方に向けた。
私は慌ててキッチンに戻り、コップに水を入れ、コウキに渡した。
コウキは罰が悪そうにコップを受け取り、聞こえるは聞こえないかの小さな声でボソッと「さんきゅ」と呟いた。
お互いどう切り出して良いのか分からない膠着状態を切り出したのは、やっぱり優しいコウキだった。
「聞いた?」
「……何を?」
「俺が魘されてるとこ」
「……うん。勝手に部屋入ってごめん」
「いや、いい。終わらない悪夢の方がきつい……。俺、これでも写真家とかフォトグラファーって言われる職業の端くれでさ。昔は賞とかバンバン獲っちゃってた訳よ。期待の若手なんて言われて調子乗って……。俺が昔付き合ってた女も同じ職業だったんだけど、そいつは才能に伸び悩んでた。俺は自分の事に手一杯で、一緒に暮らしてたのにあいつのSOSに気付いてやれなかった。遂にはあいつ、一人空に逝っちまった……。俺のせいだ」
私には、懺悔をするかのようにマリア像のペンダントに触れ、遠い目をするコウキに掛けてあげられる言葉が見つからなかった。
そこには、魘されているのか、体をぎゅっと小さく丸めながらポロポロと涙を流し、「マナ……ごめん……ごめんな」とマリア像のペンダントを握り締めながら許しを乞うコウキの姿があった。
『起こさなきゃ』そう思った。コウキを助けなくては。
思いっきりコウキの体を揺さぶって、「コウキ!」と名前を呼んだ。
何度も。
やがて目を虚ろにさせながら、コウキが「マリア?」と意識を此方に向けた。
私は慌ててキッチンに戻り、コップに水を入れ、コウキに渡した。
コウキは罰が悪そうにコップを受け取り、聞こえるは聞こえないかの小さな声でボソッと「さんきゅ」と呟いた。
お互いどう切り出して良いのか分からない膠着状態を切り出したのは、やっぱり優しいコウキだった。
「聞いた?」
「……何を?」
「俺が魘されてるとこ」
「……うん。勝手に部屋入ってごめん」
「いや、いい。終わらない悪夢の方がきつい……。俺、これでも写真家とかフォトグラファーって言われる職業の端くれでさ。昔は賞とかバンバン獲っちゃってた訳よ。期待の若手なんて言われて調子乗って……。俺が昔付き合ってた女も同じ職業だったんだけど、そいつは才能に伸び悩んでた。俺は自分の事に手一杯で、一緒に暮らしてたのにあいつのSOSに気付いてやれなかった。遂にはあいつ、一人空に逝っちまった……。俺のせいだ」
私には、懺悔をするかのようにマリア像のペンダントに触れ、遠い目をするコウキに掛けてあげられる言葉が見つからなかった。