「うん。……今日も病院行くの?」
「勿論。海雨にも……、逢いたいし」
「俺も行っていいかな?」
「うん――
『少々待たれよ。お二方』
「えっ?」
聞いたことのない高い声――子どものような声に呼ばれて、辺りを見回した。
「真紅ちゃん?」
きょろきょろする私を不審に思ってか、桜城くんが声をかけてきた。
「あ、今誰かに呼ばれなかった? お二方、て」
「俺には聞こえなかったけど……」
『ここじゃ、お嬢』
今度は私のすぐ耳元から聞こえた。
いつの間にか、肩に紫色の小鳥が乗っていた。
「るうちゃん?」
『当たりじゃ。真紅嬢よ』
小鳥がくちばしを動かすと、同時に声が聞こえる。
「るうちゃん……喋れたの?」
『当然じゃ。涙雨は黒の若君の式ゆえの。友人のところへゆかれる前に、真紅嬢を待っておる方がいらっしゃる』
「……もしかして、黒藤さん?」
『黒の若君の幼馴染の白い陰陽師じゃて』
「真紅ちゃん? 涙雨が喋ってるの?」
「へ? うん。桜城くんには聞こえないの?」