「黎が……彼氏役やってくれるまで、私と黎は知り合いだって知らなかったでしょう? どうして私の近くにいてくれたの?」
「……それは、本当のこと、言ってもいいのかな?」
本当のこと? 私が瞬くと、それを了承と受け取ってか、桜城くんは話し出した。
「俺たちの桜城は鬼人の一族だけれど、今兄貴がいる陰陽師・小埜家とは協力関係にある。小埜は小路一派の中でも中心核にいる家なんだ。一応、桜城と小埜は対等、そして桜城にとっては影小路本家が主家になる。影小路自身も、ある家の従家なんだけど――。紅亜様は本家から出た身でいらっしゃる。……影小路から、命(めい)がくだったんだ。桜木家の紅亜様と、その娘をお守りするように」
私は目を見開いて、その瞳からも情報を取り込もうとがんばった。
「それって……私が影小路に連なる娘だから、護るために傍にいてくれたってこと?」
「そうなるかな。更に真紅ちゃんは退鬼師の血も引いているし、俺も昨日まで知らなかったけど、転生だったようだし。……小路としては、なんとしても守り抜きたい存在だ」
それでは、
「桜城くんは、私が影小路の人だって、知ってたの?」
桜城くんは申し訳なさそうに顔をゆがめた。
「……うん」
では、今までの桜城くんは――……
「……ありがと」
「え?」
「~~~なんでもないっ。早く帰ろう」