ママの瞳が、遠く哀愁を帯びる。

「お父様……? ママ、影小路の家と、繋がりあったの?」

「ええ……。私も知らなかったんだけど、紅緒が、桜木にいた私のことを突き止めてきたのよ。最初はびっくりしたわ。同じ顔の女の子が訪ねてきたんだもの。私も自分が養子とは知っていても、影小路本家や、双児の妹がいることは知らなかったから。紅緒が訪ねて来てから、私は影小路の本家の外で、紅緒や、お父様、お母様と逢うこともあった。紅緒が眠る前のことだから向こうは憶えていないだろうけど、黒ちゃんとも逢ったことあるのよ。私が真紅ちゃんを授かってから逢ったときには、真紅ちゃんが……小路にとって重要な人であることに気づいて、紅緒が言ったの。真紅ちゃんが十六になったら、きっと大丈夫になる。誰にも文句なんて言わせないから、真紅ちゃんも影小路のもとで、一緒に暮らそうって」

「影小路の……おうちで?」

「真紅ちゃんは、自分が始祖の転生だって聞いたのよね?」

問われて、少しだけ頭を上下させた。

「私も影小路で育ったのではないから、紅緒から伝え聞いたことしか知らなくて申し訳ないんだけど……紅緒は、真紅ちゃんが自分の身を護れるくらいになるまでは、自分が面倒見るって言ってたの。始祖の転生であることを辞めることは出来ないから、もし影小路に関わるのが嫌でも、ある程度のことは出来るようにならないといけない、って」

「………」

「いきなりこんな話でごめんね? びっくりしちゃうわよね」

ママは私の動揺を悟ってか、そっと抱きしめた。

――私が恐れているのは、影小路じゃない。自身の中でははっきりとわかっていた。

……退鬼師なんてものの、血筋であることが嫌だ。

ごめん、なさい……。

もう逢えないのは、私の方だった。

そしてその血であることを、私はもう想像の中ですら否定出来ない。

この部屋の中には、るうちゃん以外のモノはいない。部屋の外、さきほど見た窓の外には、樹が見える。その枝という枝に、今まで漫画や映画の中でしか見たことのなかった、形容しがたいモノが並んでこちらを見ていた。

あれが……おばけとか、幽霊とかいうモノ。

るうちゃんの本当の姿が視えていると知った黒藤さんは、私に言った。