「むしろ、家になら誠さんはいるし、弥生さんは友達だしで、割かし楽しくしてるみたいだ」
苦笑を噛み殺す黎。……黎も親御さんも、大変だったんだ……。
「じゃあ、お返しに私の秘密も教えてあげるね」
「秘密?」
「私にお父さんがどうしていないか」
「母しかいないって、言っていたな」
「うん。私のお父さんはね、私が生まれてすぐに恋人と駆け落ちしたの」
「……真紅の方もすごい状況だな……」
「それがねえ、もっと驚きがあるんだよ」
「聞いていいのか?」
「聞きたくなかったら話さないよ? 黎が選んで?」
「……聞く」
「恋人、男の人だったの」
「………」
さすがに黎、閉口した。
「ママと結婚したんだけど、元がそうだったみたいで、行方不明になっちゃった。それが原因でママ、桜木の家から縁切りされちゃったの」
「……真紅は、大丈夫だったのか?」
「風評被害? とかはないよ。知ってる人ほとんどいないし、私が話したのは黎で二人目だし」
「一人目は架か?」
「海雨だよ。なんで桜城くんが出てくるの」
私が首を傾げて黎を見上げると、黎はバツが悪そうな顔をした。
「桜城の家の――鬼人ってどういう括りなの? 鬼とは違うの?」
「んー、鬼人は鬼と人の血が混じっているってことだ。完全な鬼ではない。元は鬼の一族だったところに、人間の血が入って来て、今では桜城は半分が鬼で半分が人間の、鬼人って括りだって聞いた」
「半分だけ鬼……」
「だな。ただ……話は戻るけど、弥生さんは普通の人間だ。鬼の血が入った一族ではないし、弥生さんの彼氏もそうだった。……誰にも言わないでほしいんだけど、架は桜城の血を引いてはいない、普通の人間なんだ」
「そうなの? でも……おうちのことは知ってるよね?」