「俺の父親は桜城当主の誠(まこと)さんで、母親は美愛(みあ)さん。本名はミーア。んで、架の両親は、母親は誠さんの妻の弥生(やよい)さんで、父親は弥生さんの彼氏」

「………」

ひ、昼ドラ……? ドロドロしている……。黎は続ける。

「誠さんと弥生さんは家が決めた許嫁だったんだけど、お互い恋愛感情はなかったみたいだ。誠さんは留学先で出逢った美愛さんと恋仲になって、家の騒動でイギリスにいられなくなった美愛さんを連れて帰って来た。弥生さんも誠さんとは別に彼氏がいた。お互い了承済みのことで、美愛さんと弥生さんは友達だし、誠さんと弥生さんの彼氏も友人だった。誠さんは弥生さんは許嫁を解消して、美愛さんと婚姻の手続きをしていたんだけど、かなり強引に連れて来たから、色々と手間取っていたんだ。その間に俺は生まれた。その後に弥生さんも身ごもった。んだけど、架が生まれる前に、弥生さんの彼氏が急な病気で亡くなってしまったんだ」

「………」

「弥生さんは一人で育てて行くつもりだったらしいけど、急なことで弥生さんが精神的にも身体的にも弱ってしまった。お腹の中の架も危なくなるほどに。そしたら、まだ誠さんと正式には婚姻出来ていなかった美愛さんが、誠さんに弥生さんとの結婚を勧めた。たぶん、美愛さんが妻となるには、長い時間がかかるってわかったから。美愛さんも、異国の地でたった一人の友達の弥生さんを助けたかったんだと思う。それを受けて、誠さんと弥生さんは結婚した。だから、俺と架は戸籍上だけは兄弟」

「………黎のお母さんが、美愛さん」

「美愛さんは今、桜城の家にいる。今は、あそこでしか美愛さんは生きていられないからな」

「どういう意味?」

「異国の吸血鬼である美愛さんは、日本の空気に馴染めなくてな。俺も最初はそうだったんだけど。桜城は鬼人の家系だ。敷地内は少しの妖気も漂っている。その中でなら、美愛さんは生きていられる。小さい頃の俺も、美愛さん同様、桜城の敷地より外には出たことがなかった」

「………」

私は唇を噛んだ。

「そっか……。黎のお母さんは今、辛い状況にあるわけじゃないんだね?」