「ああ、真紅が遠慮することはないからな? 真紅に隠し立てすることはないから、訊きたいことがあったらなんでもどうぞ?」
微笑とともに言われて、私はまた口を引き結んだ。
どうしてそう簡単に、黎の中に私の存在を許してくれるんだろう。視線が下に向く。
「……もう、逢わないって言ったのに……どうして、今いてくれるの?」
顔をあげられない。聞きたくない答えが返ってくるかもしれない。でも、訊かずにはいられなかった。
「なんでって……お前が激突してきたんだろう」
「うっ……それはそうだけど……」
海雨に、ここに黎がいると聞いて、何も訊かずに飛び出した。その勢いのまま、逢えてしまった。逢えたら離したくなくて、つかみかかった。
「でも、黎はそのまま姿を隠すことも出来たでしょ? 今だって……さっきだって、黎の方から来てくれた」
「ああ……その発想はなかった」
「そうなの? え、もう逢わないって言ったよね? あれ? 私の幻聴だった」
「言った。でも……逢えたらいいな、とは思っていた」
「………っ」
私は、逢いたいと思っていた。
そう、言えたらいいのに。
「真紅をこっちに巻き込みたくなかったから……置き去りにして悪かった」
「………」
「真紅? やっぱり怒ってるか?」
違う、違う。
巻き込んでしまったのは、私の方かもしれない。
黒藤さんの言葉と、桜城くんの言葉。そして、紫色の小鳥。
私の現実だけだった世界にはもう、別のモノが混じっている。
――あの夜に私を襲ったものが、人間ではない何かだったら。
「ごめん……なさい……」
押し出した声はかすれている。
「真紅? どうした。気分悪いのか?」
黎は私の言葉の意味がわからないようで、戸惑っていた。
「ごめん……私のせい、だ……」
「真紅」