「真紅の家だけど?」
「何で知ってるの?」
「においがする」
「犬か!」
「犬じゃねえけど。ほらまあ、血のにおいとかはよくわかるって。吸血鬼って理由で納得出来んだろ? そんだけだ」
「てきとーだね」
結構大雑把だった。
「あ、心音は落ち着いてきたな」
「……耳までいいの?」
「いや、こーくっついてると脈拍も直に伝わってくる」
「変態!」
「だから叫ぶな。……あーなんかいいなあ、この感じ。あったかいなあ。真紅はあつあつだなあ」
「私が一人で沸騰してるみたいな言わないでっ」
「じゃあ俺といるからあったかいのか?」
「普通の人間の体温だよ!」
「へー? でもほんと叫ぶなよ? まー俺はもっと抱きしめられるからいいけど」
「……ちくしょ」
また眩暈がして、声が小さくなった。叫び過ぎたかな……。
「はいはい。てか真紅って不良? こんな時間に出歩いていいのか?」
「……友達のお見舞い行ってたの。一人暮らししてるから言われることもないし」
「友達すきなんだな。でも、いくら親がいなくても遅くの出歩きは気を付けろよ? 俺だったからいいけど、変な奴に遭ったら」
「………親はいるよ。てゆか、吸血鬼とか名乗る変人に遭ったのも難だよ」
「俺のはほんとなんだからしょうないだろ」
「はいはい。ねえ
「ここかな」
黎が立ち止ったのは、旧いアパート。さすがにびっくりだ。意識を失っているとき、ゆらゆら揺れを感じながら眠っている心地だったら、黎はもう歩いていた。家の場所は全く教えていないのに、着いたのは私の住まい。
「あんた……ストーカーとかじゃないよね?」